根本陸夫の凄さがわかる名言・語録集!球界の寝業師の伝説エピソードから人生哲学まで
広島カープ、クラウンライターライオンズから西武ライオンズ、そしてダイエーホークス(現福岡ソフトバンクホークス)と、低迷あるいは創設期の監督や球団経営者として辣腕を振るい、選手からスタッフまで優れた人材を育て、各チームの黄金期の礎を作り上げたのが「球界の寝業師」根本陸夫。
選手としては1割台の打率でわずか現役生活4年でピリオドを打ち、監督としては三球団通算で11年勤めるもAクラスは3位になったのが1度のみ。しかし2001年には球界殿堂入りを果たし、現在も栗山英樹や森繁和など多くの監督やコーチ就任者、あるいは球界関係者からリスペクトされています。
ドラフトやトレードでは、広い人脈と繊細な心遣い、思い切った行動などで、次々と球団を支えるようになる選手を獲得し、常に球界をあっと言わせる人物でした。
今回は球界寝業師、根本陸夫の凄さがわかる名言や語録から、伝説エピソードを紐解き、人生哲学にまで迫りましょう。
根本陸夫について
まずは根本陸夫の経歴を追ってみます。
1926年11月20日生まれ、茨城県水戸市出身。旧制中学時代から大学まで放校(今でいう強制退学処分)を繰り返し、最後は法政大学を卒業。社会人を経て、1952年に近鉄パールズ(現オリックスバファローズ)に入団。
選手として実績は残せませんでしたが、引退後はスカウト、二軍マネージャー、コーチなどを務め、その手腕を発揮。1968年にチーム再建のため広島カープの監督して招へいされます。
コーチとして関根潤三、広岡達朗を、選手として後にカープ初優勝と赤ヘル旋風の立役者となる山本浩二、衣笠祥雄、水谷実雄らを育てました。
1978年にはクラウンライターライオンズの監督となり、翌年、西武ライオンズとなっても引き続き監督にとどまり、トレードで田淵幸一、山崎裕之、田尾安志、平野謙らを獲得。そして巧みなドラフト戦略で石毛宏典、伊東勤、工藤公康、渡辺智男らを指名。
情報戦を仕掛けてドラフト外で松沼博久、雅之の兄弟を入団させるなど辣腕を振るい、管理部長に就任後は清原和博をドラフトのくじで引き当て、ライオンズ黄金期の基礎を作りました。
1993年、福岡ダイエーホークス(現福岡ソフトバンクホークス)の監督となり、トレードで秋山幸二、武田一浩ら、FAで松永浩美を獲得。ドラフトでは当時存在した逆指名を有効活用し、小久保裕紀、松中信彦、井口忠仁らを指名。他にも城島健司、斉藤和巳らを獲得し、常勝ホークスの礎を築いています。
1999年4月30日、心筋梗塞で惜しまれつつ永眠しました。
私が選ぶ、根本陸夫の凄さがわかる名言・語録
【名言・語録その1】
「ラーメン屋のせがれだぞ」
ラーメン屋のせがれと言われたのは、世界のホームラン王である王貞治です。根本はホークスの監督として球界及び読売ジャイアンツの象徴でもあった王貞治の招へいに成功しますが、偉大すぎる王に対して、フロントも選手も委縮したり、遠慮したりしている様子を感じ、全員の前で王に遠慮するなということで、上記の言葉を口にしました。
天下の王貞治に、そんな軽口を言ってのけられるのは、まさに根本くらいのものでしょう。
根本の人心掌握術は徹底していて、選手寮で働く賄いさんや清掃員などを大事しました。それはその人たちが選手の普段の性格をよく理解しているからです。
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栗山英樹が引退した後、根本が西武ライオンズのスタッフに誘ったそうですが、栗山が熟慮の末に断ると「マスコミの人がどんな感じで仕事をしているのか、しっかり勉強しなさい。君のためになるから」とアドバイスしたそうです。
その栗山が日本ハムファイターズの監督になる際、球団から「根本陸夫になりませんか」と口説かれ、引き受けたそうです。
根本の辣腕はそうやって受け継がれているようです。
【名言・語録その2】
「本気で強いチームをつくろうとしているスカウトを集めてこい」
チームの土台作りに定評があった根本ですが、スカウトには「自分の判断で何でもやれ」「他人がいたら一緒に見るな。ひとりで行動しろ。絶対に群れるな」と厳命していたそうです。
根本自身も地方に行き、タクシーに乗ると、運転手にそのあたりにいい選手がいないかを聞き、降りるときにはチップをはずんで、いい選手がいたら電話してと連絡先を渡していたそうです。
ただスカウトに自主性を求めるだけでなく、選手の事情を考え、スカウトが契約金の上乗せを相談すると、余計な事は言わずにそれを認めたそうです。
寝業師と言われ、ドラフト制度の裏をかいたり、逆指名を最大に生かしたりと、巧みな戦略面ばかりクローズアップされますが、その背後にはスタッフへの信頼と、それに応えるための度量を持っていたことがわかります。
【名言・語録その3】
「自分で金を払ってメシを食え」
森山良二が根本に言われた言葉です。
「ただ酒は飲むな。おごってくれる相手が、最初は森山さんと言っていたのが森山君になり、最後は森山になる」
この言葉にはかつて西鉄ライオンズで起こった「黒い霧事件」という八百長疑惑に対する、プロ選手の心構えという面もあるでしょう。しかしそれだけではありません。
「相手が手にした金を何に使うか、よう見とってみい。そうすればその人間がよくわかる。選手1人を育てるっていうことは、金がかかることやからな」
金の使い方で人を見ぬき、その人との付き合い方や、選手の場合ならば性格を理解するという面もあったようです。
根本は選手を指導している際、打球が飛んできても微動だにしなかったといいます。それは単に度胸があるというのではなく、ひとりを指導しながらも、しっかり周囲に目を配っていたからでした。
低迷していたカープ、ライオンズ、ホークスに変革をもたらした根本の本質がそこに垣間見られるように思います。
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名言からの学び
・周囲の状況を的確に把握することが人心掌握の第一歩。
・優れた人材を集めるには、優れた人材の自主性と判断に任せる。
・他人への目配りの積み重ねが、チーム全体の浮上の鍵となる。
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